1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「お姉ちゃん、ちょっとふたりきりで話がしたいんだけど」
3日目の昼食を終えた頃のこと。
ミラベルがアリアを貴賓室に呼びつけたのである。
使用人も下がらせて、ふたりだけで大切な話をするというのだ。
嫌な予感がした。
そして、その予感は的中したのである。
「フィリクスさまって噂と違って、とてもしっかりしていらっしゃるのね」
アリアは冷静に「そうね」と返事をした。
すると、ミラベルはにっこりと満面の笑みを浮かべたあと、半眼でアリアを見据えて言った。
「そうそう。フィリクスさまには愛人がいて、お姉ちゃんはもうすぐ離婚するのよね?」
アリアはぴくっと眉をひそめる。
どこでその情報が漏れたのだろうか。
フィリクスに愛人がいるという噂があったのはわかるが、1年で妻と離縁することはふたりだけの話だったはず。
「旦那さまがあなたにそう言ったのかしら?」
「違うわ。使用人たちが話しているのを立ち聞きしただけよ。でも、フィリクスさまは愛人とは上手くいっていなくて、そのうち別れるっていう噂も聞いたの。でも、お姉ちゃんたちは離婚するんでしょ」
使用人にもれていたのね、とアリアは嘆息した。
まあ、この屋敷で話していれば、誰かに聞かれることはあるかもしれない。
特に侍女のユリアはそういったことに敏感だから。