1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「だから何? あなたに関係あることかしら?」
否定しても無駄だと思い、簡潔に妹の真意を訊ねた。
予想はしているが、やはりミラベルはアリアの思ったとおりの発言をした。
「あたしがフィリクスさまをいただいてもいいでしょ。だって愛人に逃げられたあげく、妻にも逃げられるなんて、フィリクスさまがお可哀想だもの」
アリアはミラベルを真顔で見据える。
ここは感情的になっても意味がない。
堂々としていればいい。
妻なのだから。
「バカなことを言わないで。あなたには別の家門から求婚が来ているでしょう?」
「でも、私はフィリクスさまがいいの。今日初めてお会いしたけど、優しくて素敵なお方だわ」
「あなたの手におえる人じゃないわよ」
むしろ、妹と一緒になったらフィリクスは利用されてしまうかもしれない。
「いいのよ。愛の力さえあれば、どんな障壁も乗り越えられるもの」
アリアは口もとが歪んだ。
もやもやした感情が口から飛び出しそうになる。
「もうやめましょ。あなたと話す意味がないわ」
「お姉ちゃん、逃げるの?」
「え?」
不敵な笑みを浮かべながらこちらを見つめる妹の表情が、妙にイラついた。
「フィリクスさまから愛されていないことで自分に自信がないんでしょ」
「何言ってるの?」
「お姉ちゃんっていつもそうよね。両親があたしに構ってくれるからって、陰で嫉妬して、あたしにいい顔を見せてくれながら心では憎んでいる」
「バカなこと言わないで」
「図星でしょ」
何なのよ、この子。
喧嘩を売りに来たのかしら。
今までも妹に対して鬱憤が溜まっていたけれど、もう限界!