1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

「まあ、お姉ちゃんがどう言おうとも、あたしはフィリクスさまに全力でアピールしていくつもりだから。彼と再婚するのはこのあたし」
「そんなこと絶対にさせないわ!」

 つい感情が高ぶって大声で叫んでしまった。
 すると、ミラベルは驚くでもなく、なぜか笑みを浮かべた。


「あら、どうして?」

 ミラベルの問いに、アリアは思わず感情のままに答える。


「旦那さまは、私のものよ。今まではあなたに何でも譲ってきたけど、彼だけは絶対に譲れない」


 アリアは自分の言葉にハッと我に返り、思わず口をつぐんだ。
 そんなアリアを見たミラベルは、急にふふっと笑い出した。


「お姉ちゃん、フィリクスさまのことが好きなのね」
「え? ばっ……バカなこと」

 アリアは混乱した。
 すると、突如部屋の扉が開いて、フィリクスが現れた。


「今の話は本当か? アリア」
「旦那さま? え? どういうこと?」
「君の妹に呼び出されて、いいと言うまで部屋には入るなと言われたのだが、話を聞いてしまってつい……」

 そこでアリアはハッとした。
 ミラベルを見ると、彼女はクスクス笑っている。


「ミラベル、あなた……」
「あとは夫婦で話し合いでも何でもして。あたしは何だか体調が悪くなったからこれで失礼するわ。では、お騒がせしました。さようなら、侯爵さま」

 そう言ってミラベルはさっさと出ていってしまった。


 謀られた……!


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