1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 アリアは贅沢をすることを許されなかった。
 あなたは兄と違って女なのだから我慢しなさい、と言われた。
 あなたは姉なのだから病気の妹のために我慢しなさい、と言われた。

 跡継ぎの兄は常に新しいものを与えられ、病気の妹は可哀想だからと何でも与えられた。
 アリアだけ、贅沢は禁止されていて、ドレスも古いものばかりだった。
 妹がひらひらした可愛らしい高価なドレスを着ているのを見て、まったくうらやましいとは思わなかったが、読書好きなアリアに母はもう少し本を与えてくれてもよかったのにとは思った。


 父も母もアリアに興味を示さなかった。
 それなのに、結婚話となれば別だ。

 相手は平民に溺れる侯爵である。
 溺愛している妹は決して嫁がせたくないだろう。

 両親はすぐにアリアへ嫁ぐように命令した。
 これをアリアは快諾する。

 正統な理由で実家を出ることができるし、他の女に溺れているような夫とはいずれ離縁することは目に見えている。
 だから、アリアはこの結婚を利用することにしたのだが、まさか初夜から離婚宣言されるとは。
 願ってもないことである。


 とにかくこの1年は好きなことをたくさんしようと思った。
 生きていく術を身につけて、離婚後はどこか遠い町に行って、ひとりで人生をやり直そうと。


 アリアのこれからの人生は、希望に満ちていた。


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