1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 数日後、再びミラベルは侯爵家を訪れる。
 話し合いをしたフィリクスとアリアは、並んで立っていても心の距離が近づいたのがわかるほど、ふたりは穏やかで微笑ましかった。


「医学の先生の家に居候して学ぶことになったの。将来はアカデミーに行って、いつか立派な医師になるわ」

 ミラベルが今後のことを報告すると、アリアはとても喜んだ。


「あなたの輝かしい未来を応援しているわよ」
 とアリアが言った。

「ありがとう。私も、お姉ちゃんの未来が幸福であふれていることを祈ってる」
 とミラベルは言った。


 ねえ、お姉ちゃん。
 もし、あたしが病気じゃなかったら。
 あたしたち、本当はすごく仲良しの姉妹でいられたのかな。

 ほんのひとときだったけど、あのときお姉ちゃんがあたしを連れ出してくれた日のこと。
 自然が美しくて、風が気持ちよくて、あれほど生きててよかったと思えたことはなかったの。

 楽しくて、幸せで、嬉しかった。
 一生、忘れない思い出よ。


 お姉ちゃん、どうか幸せになって。


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