1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
11、1年後に幸せになりました
「約束の1年が来てしまいましたね、旦那さま」
とアリアは静かにお茶を飲みながら言った。
「ああ、そうだね。あっという間だった」
とフィリクスはテーブルを挟んだ向こう側でアリアの顔を見つめながら返した。
本日はフィリクスとアリアの結婚記念日である。
結婚式をした去年の今日、ふたりは1年後に離婚することを約束した。
アリアはカップを静かに置いて、フィリクスをまっすぐ見つめた。
「さて、どういたしましょうか? 旦那さま」
「どうするも何も、僕は君と別れるつもりなんか毛頭ないよ」
「そうですか……」
アリアが微妙な反応をしたので、フィリクスは急に慌てて立ち上がった。
「え? 君は別れたいのか? うそだろう? だって、こんなに仲良く暮らしているのに。この前だってふたりで隣国に旅行したじゃないか。君は楽しそうだったぞ。まさか、別れる前の最後の思い出にしようというのか? なぜだ? 僕に何か不満があるのかい? 何でも話してくれ。悪いところは直すから」