1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

 あまりにも必死になって訴えてくるフィリクスに、アリアは罪悪感を覚えた。
 少しからかってみただけなのに、なんて真剣な顔をするのだろう。

 アリアがクスクス笑うと、フィリクスは呆気にとられて呆然と立ち尽くした。


「旦那さま、お座りになってください。お話がございます」
「え? ああ……別れ話なら聞きたくないのだが」
「違いますわ。私も離縁する気はございません。それに、もう別れたくても別れられない理由ができましたの」
「それは、どういうことだい?」

 アリアはにっこりと微笑んで、そっと自分のお腹に手を当てる。
 それを見たフィリクスは驚いた様子で身を乗り出した。


「アリア、お腹が痛いのかい? 何か悪いものでも食べたのだろうか」

 そばにいた数人の使用人たちが全員、ずるーっと転びそうになった。

「鈍感にも程があるわ」
 と侍女のユリアは呆れ顔になった。


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