1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません
「まあ、おめでとう! 孫ができるのね!」
「アリア、素晴らしい。本当にありがとう!」
義両親が部屋を訪れてさらに賑やかになった。
彼らは涙ながらに祝いの言葉をアリアに告げ、フィリクスには「しっかりするんだぞ」と念を押していた。
アトラーシュ侯爵家は笑顔に包まれている。
本当は、実の両親に疎まれていたアリアは、自分に子育てができるとは到底思わなかった。
両親と同じように接してしまって子供に辛い思いをさせてしまうのではないかと、身ごもってからずっと不安だった。
しかし、夫と義両親の様子を見ると、それも杞憂だと思った。
この人たちと一緒なら、実の両親のようなことにはならないだろうと。
そして何より、素直で純粋な夫のフィリクスは、誰よりも何よりも我が子を愛するだろう。
「きっと、あなたと一緒にいると、私は一生幸せでしょうね」
アリアはフィリクスにそう言った。
すると、彼は笑顔で答える。
「僕も、君と一緒にいるとずっと幸せだ。これは勘違いなんかじゃないぞ」
「ふふっ、わかっていますわ」
ふたりは手をつないでそっと寄り添った。
こうして、偽りの夫婦は一生、本物の夫婦として過ごしたという。
〈 完 〉