蒼薔薇 ・儚い想い・

少女はまるでお伽噺から飛び出して来たかのように可憐だった。


漆黒の髪は艶やかに光り、肌は白く、顔はお人形のようだった。

手を伸ばし、触れた肌は大理石のように冷えていた。
アルーシュは急いで少女を暖めようと抱き上げた。


少女はアルーシュが抱き上げても目を覚ますことはなく、安らかにアルーシュの腕の中で眠り続けた。






アルーシュはこの少女を自室へ連れてきた。

(彼女は何処から入ったんだ?)

頭の中は疑問でいっぱいいっぱいだった。

"聖霊の間"は王宮の奥に位置していた。

勿論、警備員が王宮内へ入れる入り口を警備している。他にも警備員が巡回しながら警備しており、こんな少女がひとりで王宮に忍びこめるわけがなかった。

誰かの…例えば大臣とかの娘が迷いこんだのかもしれないが大臣、将軍など主な人物の娘は全員顔を見たことがある。
なんせ、アルーシュはレルム王国の後継者。皆、自分の娘をアルーシュに見せたがるのだ。
しかしそれが目的の場合以外娘を連れて来るのはほとんどあり得ない。


ならばこの少女は誰なのだろう。


疑問は一向に解けそうになかった。





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