悪魔のホームページ
https://Page3.岬菜乃

「芸能活動、辞めようと思っているんです」

「え──────?」

私が再び撮影のための車に乗る前に、事務所で言ったその言葉の後だったせいか、かなりマネージャーと気まずい空気になってしまった。

「えーと、優奈?今日の予定の確認なんだけど」

気まずそうに話しだすマネージャーの古川さんに申し訳なく思いながらも、あの男と契約したからには成し遂げなければいけない。

この芸能界という闇の世界で今まで生きてきたこの経験も、実力も、全てを思う存分使って、絶対に私は復讐を成し遂げる。

勿論今まで積み上げてきた地位を捨てるのは少し躊躇いもあるけど、それもすぐというわけではない。

区切りの良い所で辞めればいいだけ。

そこまで気に病む必要もない。

「古川さん、私もすぐに辞めるつもりありませんし、いつも通りの接し方で良いですよ」

車から降りる時にそれだけ言って現場に向かう。

「先日は私の都合で色々とすみません」

監督にそう謝ってから、私は台本を開く。

「あ、そうそう。優奈。お前が帰った後に変更した部分が結構あるんだが──10分後の撮影に間に合うか?」

突然の監督の言葉に、私は目を見開いた。沢山付け足された場面。

「監督‼︎橋美さんは今来たばっかですよー?そんな出来るわけないじゃないですかぁ」

後ろから聞こえてきた声に、顔を挙げると、そこには今回主演である私の友達役を担当している岬菜乃がいた。媚を売るような、甘ったるい声を響かせて。

「足を引っ張ってる自覚持てっつーの」

ぼそっと耳元で言われた言葉に、歯を食いしばる。

岬菜乃──

コイツは、柚のお母さんを殺したに近しい人だ。

大人気女優だった柚のお母さんを陥れて、自殺まで追い込んだ。

柚を曲げた人間の1人────

「撮影入りまーす」

その声と同時に、私は台本を置いて立ち上がる。深呼吸をして、カメラの前に立った。

撮影開始合図とともに、息を吸い込む。



復讐劇の幕開けだ────


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