悪魔のホームページ

男の手を取った瞬間に、景色がぐるっと変わった。不気味な黒い空間。現実ではあり得ないような出来事に呆然とした。

「さて、それじゃあ橋美優奈さん。柚さんにあった出来事を、全部教えてあげるね」

パチンと鳴らされた指と同時に、私の頭の中に、沢山の映像が流れてくる。

何、コレ────

「私は望む世界に案内することができるんです。あなたの願いは何ですか?折角ですし、叶えて差し上げましょう」

目の前の男は不気味に微笑んで、手を広げる。

「復讐したいっ────‼︎柚を傷つけた奴ら全員に復讐したいっ‼︎世界なんて知らない‼︎望む世界なんてない‼︎悪魔なら出来るでしょ?私は絶対にアイツらを許さない‼︎」

私の罵声に、男は呆然としている。そして楽しそうに微笑んだ。

「ハハハッ‼︎やっぱり君面白いね。今までの奴らなら大抵俺の正体を知って怖がったり、泣いたり、逃げようとしたり、逆にもう嫌になって望む世界に行きたいって言い出したり──こんな面白いのは君が初めてだよ」

笑い声が響き渡る。男は楽しそうに口を開いた。

「そうだなぁ──君に力を上げるよ。相手の欲望を読む力を。復讐を手伝って上げる代わりに、勿論代償を払ってもらわないとね」

代償──どんなものを要求されるのだろうか。私は軽く息を呑む。

「君はこれからずっと俺の仕事を手伝ってよ。相手の欲望を読み、上手くホームページへのアクセスへ促す。それが君の仕事。俺も悪魔だからね、人の魂がどうしても必要なんだ」

────そんなことか。

もっと残酷なお願いをされると思っていた私は少しだけ安心した。

「あとそうだなぁ。色々都合があるから君には俺の家で生活してもらいたい。だから君の親から君の記憶を消すし、他の全員からも君と君の親の関係を全て消す」

お母さんと……

「あとは、俺の力を分けたら君は不老になるから芸能活動はやめてもらう。区切りのいいところで活動をやめて、俺の力で仮の容姿も作ってあげるから。何かあった時とかは仮の姿で生活してね」

男はそこで一度、確かめるように私を見る。

「これで大丈夫かな?」

私が頷くと、男は赤い瞳に鋭い光を宿わしてから私の方に手を向けた。

「それじゃあ、契約成立だ」

体の中に何かがドロドロと流れてくる感覚になる。私達がいた場所は徐々に徐々に明るくなっていき、大きいシャンデリアに広くて綺麗な部屋になる。ベッドや机、クローゼットは変わっているものの、置いてあるカバンやその他諸々は全て私の家にある物だった。

「これで今日から君は契約者である俺以外の読めるようになる。これからよろしくね、優奈」
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