幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。
それと財布とスマホ、エコバッグをコートのポケットに入れて、近くのスーパーに向かう。
三月に入ったとはいえ、気温はまだ低い日が多い。この日は風が少し強くて、体感温度はさらに低まっていた。冬用のコートにしておいて正解だった。
実家にいた頃の行きつけのスーパーは、以前来た時と様子は変わりない。メモに書かれた食材はそこそこの数あったけど、どれも難なく見つけることができた。
午後の早い時間なので、店内は混んではいない。空いていたセルフレジで会計を済ませ、店を出る時、思いがけない人物に出くわした。
「あ」
「おう」
「……なんでいるの」
「ご挨拶だな。たまに帰ってきちゃ悪いか」
「悪くないけど」
お互い、大学進学を機に実家を出て、一人暮らしを始めた。お正月やお盆ならともかく、そうでない時期に帰省のタイミングが重なるなんて、かなり珍しい。付け加えるなら、今年のお正月はこいつが帰ってきたのを見かけていないので、会うのはずいぶんと久々だ。
同じ町内に実家がある。向かい筋斜め左前の家の息子。
学年が同じなので、必然的に幼稚園から高校まで一緒だった。
「重そうだな」