幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。
「そこの、カフェでさ。コーヒーでも奢って」
袋を持ったままの手で示された方向を見ると、全国展開しているカフェチェーンの店があった。前は見かけなかったから、最近できたのだろう。
「なんでよ」
「見返りナシで荷物持ちされるの、嫌そうだったから。あと、ちょっと話したいし」
「……話?」
「そんな疑わしそうな目で見んなよ。久しぶりだから近況とか、気になるだけだよ」
「あっそう」
「──あ、もしかして冷凍物買ってる?」
「買ってない」
「なら、三十分ぐらい帰りが遅くなってもいいよな」
彼がそう結論づける頃には、カフェの入口まで来ていた。
運良く空いていた四人掛けの席に、向かい合って座る。荷物は空き椅子にひとつずつ置いた。
こいつ──原田倫之と会うのは、どれぐらいぶりだろう。
家が近く、子供たちの年齢も近いということで、私の実家である柴崎家と原田家は、昔から家族ぐるみで交流していた。親同士も子供同士もそれぞれに気が合ったので、子供たちがとっくに成人した現在でも、何やかやと状況は伝え聞く。
「仕事忙しいの?」