幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。
だからよほどのことがない限り退職はしないと決めて、パワハラ寸前の振る舞いにも耐えつつ、六年。
気づけば三十歳を過ぎて数年だ。
同年代の友達は、ほとんどが結婚しているか、交際相手がいる。仕事に生きるから、と独身を貫くつもりの人もいるけど、その子はめちゃくちゃ頭が良くて外交官にまでなっているから、そういう選択肢もありだろう。
私みたいな、小さな会計事務所の事務担当でしかない身の上では、仕事に生きるとまでは考えようがない。
送られてきていた、同窓会のお知らせを思い出す。
卒業以来会えていない人もいるから、行きたい気持ちはある。でもすでに三十過ぎ、結婚の話題を誰も出さないはずがないし、こちらに話を振られる可能性だって十分ある。
その時、正直にフリーだと答えるのは、なんだか気が引ける。有り体に言ってしまえば、少し憂鬱だった。
はあ、と吐いたため息の音が、意外に大きかったらしい。コーヒーをすすっていた倫之がこちらを見た。
「なんだ、やっぱり仕事大変なのか」
「そうじゃない」
「じゃ何」
「……同窓会のお知らせ、来てた?」