幼馴染みとの契約交際が溺愛必須に変更されました。

 視線をちょっとの間さまよわせた後、答えが返ってくる。
 「そういや来てたな、さっき。一回読んだだけで放ってあるけど」
 「私も」
 「卒業十五年記念とか、なんか派手に書いてたよな」
 倫之の言葉で、つまり一人暮らしも十五年目になるのだ、ということに気づく。
 十五年。
 今年三十三歳になるのに、結婚の予定どころか彼氏もいないなんて、どうなんだろう……と我ながら思ってしまう。
 自分でもそう感じるのだから、周りにはもっと強く思う人がいるだろう。たとえば両親とか。
 大学時代と最初の会社にいる時期で、交際経験は二回ある。それなりに踏み込んだ付き合いをしていたものの、どちらの人も、親に紹介する段階にまでは至らなかった。
 だから両親は私を、男性に縁の薄い娘だと思っているだろう。お見合いを強制されたことは今までにないけど、もしかしたら、近い将来にと考えてはいるかもしれない。
 お見合いに拒否反応があるわけじゃないけど、人からの紹介となると、相手を気に入らなくても断りにくさがつきまとう。周囲に流されるように結婚まで至ってしまうのはさすがに嫌だ。
 「で、そのお知らせがどうかした?」
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