Beautiful moon
7年前のあの頃。

高校生女子から見たら、20代後半の男性教師など、恰好の恋愛対象になってしまう。

同世代の男子と比べれば、どれだけ大人で魅力的な男性として映っていたか。

しかも、スマートで優しく冗談も通じて、男女隔てなく人気のある先生なら尚更。

それは、当時も今も冷静沈着を”地”でいく私だって、例外じゃない。

3年時にクラス担任と学級委員として、他の生徒より関係が近しくなれば、より一層想いは強くなっていくのも自然の理。

ただし、私も…おそらく先生に群がる他の生徒達も、先生の特別な存在になろうなどとは、誰も思ってはいなかっただろう。
なにせ想いを伝えたところで、100%玉砕がわかっていたから。

そう。

先生には、あの頃既に最愛の恋人がいた。

確か先生より3つ年下で、同じ大学の後輩。

当時は他の高校で国語の(現国ではなく古典だったか?)教師だった女性。


「俺にはもったいないくらいの子」


「一緒にいるだけで、凄く幸せなんだ」


「俺は一生、彼女を大事にする」


その存在を問われれば、相手が生徒だろうと誰だろうと、隠すことなく堂々と彼女の…恋人の話していた。

そんな先生の真っすぐな誠実さが、羨ましくもあり、憧れでもあった。

まだ高校生だった私は、先生に想いを寄せながらも、いつかそんな風に、誰かに愛し愛されたらどんなに幸せだろうと、思わずにはいられなかった。
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