Beautiful moon
『ここ…』
『ん?』
『とても素敵な場所ですね』
自然と口から零れ落ちたセリフに、美月さんもホッとした様子で、私の視線の先を追い
『でしょう?』
と、微笑んだ。
快晴の青と、ネモフィラの淡いブルーが織りなすコントラスト。
その中央に立つ美月さんの白いワンピースがくっきりと映え、緩やかな風が吹く度に、まるで海に浮かぶヨットの帆のように揺らめく。
『ここはね、透と付き合ってから初めて二人で行った場所なの。天気もこんな風に快晴で、二人して”花と空との境が無いよね”って…』
遠い日を懐かしむように、ネモフィラを見つめる美月さんの横には、在りし日の先生の姿が見えるような気がした。
風に揺れる髪を抑えながら、もう一度こちらを見てから、優しく問いかけられる。
『少し落ち着いたかな』
『…はい』
『今日はね、あなたにどうしても聞いてもらいたい話があってここ(夢の中)に来たの…少し時間良いかしら』
良いも悪いも、私に拒否権などあるはずもない。
仕方なく黙って頷くと、蒼いネモフィラの海原を背に、微笑む美月さん。
『それじゃ、とりあえず先ずは場所、変えましょうか』
『場所を変える?』
『そう、もっとゆっくりお話できる場所に移動しましょう』
そう言う美月さんの言葉は、後半急に立ち込めた靄の中に埋もれ、次の瞬間、また吹き荒れた突風にかき消される。
『…っ!!』
あまりの強さに、もう一度ギュッと瞼を閉じてしまい、再び目を開ければ、そこは…。