Beautiful moon
第Ⅰ章 月夜の密契
① 再会
『美園、どうした?そっち出口だぞ』
高校を卒業して7年、成人式の後に開催されて以来、2回目に開催された同窓会。
一次会も佳境に入った時間、上手いこと抜け出して帰るつもりが、店の出口のところで同じクラスだった向井君に見つかってしまった。
『ちょっと酔い冷ましに、外の空気吸ってくるだけよ』
咄嗟にそれらしい嘘をサラリと口にする。
『お前そんなに酒、弱かったっけ?』
『さっき高木君と徳永に、美味しいワイン散々飲まされたの』
『あ~なるほど。そりゃ飲まない訳には行かないよな』
『まぁね』
『もうじき余興が始まるらしいから、早く戻れよ』
『うん、わかってる』
気の良い同窓生は、単純に私の嘘を信じ込み、疑う様子も無く会場へと戻っていく。
若干の罪悪感を残しつつも、本会場であるイタリアンワインバーを後にした。
9月に入り、日中はまだ残暑が続いているものの、陽が落ちてこの時間にもなれば、半袖では少し肌寒い。
持っていたバックから薄地の上着を取り出し羽織ると、しっかりとした足取りで、駅に向かって歩き出す。
成人式の時以来の同窓会は、1度目のそれと違い、時間の経過を如実に感じるものだった。
学生だったものは社会人になり、社会人だったものは昇進したり転職したり、結婚が決まったものもいれば、早くに結婚した人には子供ができたり…と。
なにより、前回の会場だった居酒屋でバカ騒ぎをしていた同窓生達が、今回は騒ぐ限度をわきまえているようで、この5年の月日が各々を”大人”に成長させたのだと、実感した。
…正直、何故か焦燥感に襲われた。