Beautiful moon
『先生、そのハガキ』
『ああ、高木からもらったんだ。前回は行かれなかったし、今回は顔だけでも出そうかと思って…って、あれ?木崎がここにいるってことは、もしかして…』

ハガキには会場と簡単な案内図、それと開始時間しか書かれていなかったのを思い出した。

すでに開始時刻から2時間半経過していて、先生がそう思うのも不思議ではない。

ただ、確か今日の会場の店は、貸し切りな上に、時間の制限などなかったはずだけど…

『終わってますよ』

その時、自分の口からスラリと嘘がこぼれ出た。

『もうとっくに解散して、みんな、次の店に流れて行きました』

私はいつから、こんな饒舌に嘘を吐くようになったのだろう。

なんの疑いもせず、私の嘘を信じ切った先生は、残念そうに肩を落とす。

『なんだ、もう終わってたか』
『はい』
『それは、残念だったな。さすがに教師が二次会まで顔出すのもどうかと思うし…今日は諦めるか』

潔く諦める先生を前に、さっき嘘を着いた瞬間に、あらかじめ用意していたのセリフを口に出した。

『先生』
『ん?』
『良かったら、これから私と飲みに行きませんか?』
『え?…あっ、いやいやマズいでしょ、それは』
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