Beautiful moon
『何故です?別に私達もう教師と生徒じゃないですし、問題ないですよね』
『いや、問題あるとか無いとかじゃなくだな…』
『先生だって、今日の同窓会の様子とか、皆の近況とか知りたくないですか?』
『う…それは…まぁ』

乗り切らない先生に、教師という職業の痛いところを微妙にくすぐってみる。

『あ、まさか先生、私と飲んだら何か疚しい気持ちになってしまうとか?』
『無い無いっ!ある訳ないだろ』
『ですよね。じゃ、OKっということで』
『木崎、ちょっと待て』
『最近見つけたイイ感じのお店、抑えてしまいますね』

隣で焦る先生を横目に、スマホで良さげな店をサクッと予約する。

強引すぎるのは百も承知だけど、ここで逢えたのは、何か運命的なものを感じてしまったから。

もちろん、先生とどうにかなろうなんて、微塵も考えてはいない。

…ただ、あの頃から引きずっていたこの想いを断ち切るための、何か”きっかけ”が、欲しかっただけだった。

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