【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 私が思ったことは、既にシリルも考えていたらしい。深刻な顔になって、眉を寄せた。

「ベアトリスは、ルーンは自分のところには来ていないと言っているんだ。用事があるから王に頼んで呼んで、待っていたけどその日ルーンは来なかったと。あいつは魔法使いらしくきまぐれなところはあるけど、ちゃんと約束は守るから……心配だな」

 長い時間を共に過ごした友人であるシリルも、ルーンさんは約束を守ると言った。そうよ。彼が伝言もなしに、約束を破るなんてやっぱりおかしいんだ。

「あの、シリル。ルーンさんは、聖女ベアトリス様には……自分は手こずるかも知れないと、前に言っていたことがあります。そうなんですか?」

 確か自分には勝てない人が居るのかと聞いた時に、彼はこう答えたはずだ。「ベアトリスの対処は、面倒そうだけど」と。

 私の質問にシリルは、浮かない顔をして頷いた。

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