【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「あら。そこに居るのは、この前に勇者シリルと結婚したノワール家のお嬢様でなくて? ……とても、偶然ね。私はヴェルデ家に招かれて来たんだけど……貴女が居るなんて、まったく知らなかったわ。接近禁止を命じられていることをヴェルデ家が知らなければ、仕方ないわよね。ただの偶然だもの」

 偶然なんかである訳がないのに、ベアトリス様は無邪気に微笑んでいた。ううん。これで王の追求を切り抜けるから、何も言うなという忠告かしら。

「フィオナ! ベアトリスに俺は殺せない。俺は良いから。早く逃げろ!」

 ルーンさんが立ちあがろうとしたけど、彼の魔力は出した分だけ吸われるのか。三角すいの中で大きな音がして光が跳ねて、彼は険しい顔の眉を寄せた。

「そうね……確かに私には、ルーンは殺せないわ。けど、この結界の中に一生閉じ込めておくことは、出来るの。ルーンは優しいから、自分の自由のために多くの国民を危険に晒すなんて、絶対にしないもの。ふふふ。おあいにく様」

 魔王討伐の旅をしたこの人も、ルーンさんが本当に優しいって、わかっているからこんなこと……本当に、最低な人。

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