【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「僕が、フィオナを逃す訳ないじゃないか。何が英雄だ……俺の女を横取りしやがって」

 自分勝手な理屈を吐き捨てるように言ったエミリオ・ヴェルデは、これから何もかも自分の思う通りになると疑ってもないようだった。

 美しい髪をつまらなそうに触っている聖女ベアトリス様は私とシリルを離婚させるという目的さえ果たしてしまえば、何もかもどうでも良いのだろう。

 彼女にとってはシリルを手に入れることが出来れば、国民の命だってどうでも良いことだから。

 皆、勝手なことばかり言う。私の気持ちなんて、誰も気にしてない。どうとでも良いように操作出来ると、軽く見られている。

 昔、何も知らない私は、何もかもを持つ完璧な男性に愛されればそれだけで幸せだろうと、そう思っていた。

 けれど、本当にそうだろうか。

 社交界で人気者で親から見れば理想的な求婚者のエミリオ・ヴェルデと結婚すれば、確かに皆の羨望の的になるだろう。

 けど、それは私の望んでいた幸せなのだろうか。

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