「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 聖女ベアトリス・ヴィオレと結婚したくないシリルは、酒にも酔っていたしもうどうにでもなれとばかりに、酒場の前で王命に逆らうための結婚相手を募集していた……と?

「そうそう。言った俺はほんの冗談のつもりだったんだけど、マジでやると思わなかった」

 あれをやってみればと言い出したルーンさんは、この事態に責任でも感じているのか、息をついて天を仰いだ。

「けど、こうして可愛い結婚相手が見つかったんだから、やって良かったよ。あ。借りた看板を、直しとけよ。ルーン」

「……わかってるよ」

 私が彼ら二人の会話がわからずに首を傾げていると、シリルは気が付いてくれてにこっと笑顔になった。

 私は彼の笑顔を見て、心臓が止まるかと思った。

 だって、異性からそんな表情で微笑まれた記憶なんて、私にはないからだ。そう。本命ジャスティナの仲の良い友人である私になんて、そんな好意的な顔を向ける人は居ない。

「フィオナ。紹介するよ。見ての通り、こいつは魔塔所属の魔法使いでルーン・ヴェメリオ。便利な魔法を色々使うことが出来るから、看板の文字替えなんて、お手のものなんだ」

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