「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 ここまでの会話で薄々理解していたけど、ルーンさんは勇者ご一行の一人魔法使いだったみたい。

 厳しい魔塔に所属しているとなると魔法使いとしてかなりの技量を求められるから、きっと若くして優秀な人なんだろう。

「魔法使いだからって、便利に使われて本当にうんざりするよ。それで? 王様には、どう伝えておけば良い訳?」

「俺はノワール伯爵家のフィオナ嬢と結婚するので、申し訳ないが、ヴィオレ家との縁談は辞退したいと」

「と、なると……早々に、婚約ではなく結婚しているという既成事実が要るな。あんたは? 本当に、それで良いの?」

 いきなりルーンさんに話を振られたので、私は慌てて頷いた。

 結婚相手を急募していたシリルに、応募したのは私だ。それに私が意見をくつがえし、ここで逃げてしまえば、彼は意に沿わぬ相手と結婚させられてしまうだろう。

 となると、勇者シリルさんと結婚したくない理由が見つからない私は、うなずくしかない。

「だっ……大丈夫です! 私なんかで、お役に立てるのなら」

「良し。それでは、すぐに結婚しよう。明日ノワール伯爵家へと、ご挨拶に行く」

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