【つぎラノノミネート中!】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「あっ……それもそうですよね! 私……どうしてそれに気がつかなかったのかしら……」
なんだか、恥ずかしい。勇者のシリルだけど現在は軍でお仕事をしているので、夜遅くに帰宅することも多い。彼は遅くなる日は、部下に頼んで連絡をしてくれるので、私はそのまま寝てしまう。
だから、夜にわざわざ起きていて、シリルを眠ってしまうのを待つなんて、思いもしなかった。
「うーん。そうだな……よくよく考えたら、徹夜は肌に悪いか。昼間、シリルの居ない時に寝といたら? 俺が数時間ぐっすり眠れる薬作ってあげるからさ」
ルーンさんは希代の魔法使いとして、勇者パーティになる前からも有名で、かの優秀な人材が集まる魔塔にも、幼い子どもの頃から所属していたらしい。
「ありがとうございます! ようやく、シリルの寝相を見られますね!」
「うん……楽しみにしてて」
ルーンさんが非常に楽しそうな顔で微笑んだので、私も感謝の気持ちを込めて笑顔で頷いた。
◇◆◇
翌々日、今夜も遅くなるというシリルからの手紙を受け取り、私はルーンさんに処方して貰った魔法薬を使うことにした。
起きるのが早過ぎる夫が、早朝に何をしているかも気になるけど、私が見たいのはとりあえず彼の寝相……今日こそは絶対、見たい!
私はまだまだ日の高い昼間だけど、就寝の準備を済ませた。
「奥様、もう眠ってしまうんですか……?」
私付きのメイドレイチェルは、まだ若く男爵家の流れを汲む商家出身の若い女の子だ。栗色の巻き髪に同色の目を持ち、古典的なメイド服が少しふっくらした可愛らしい彼女の体型に良く似合っていた。