【つぎラノノミネート中!】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
シリルが遅くなるって聞いていたから、いつものように深夜に帰って来て、その時間に私が眠っていてもおかしくないって思うと思って……こういう、急に予定が変わって早く帰って来るということもあることも、わかっていたはずなのに……自分勝手な欲望に負けてしまった。
ゆっくり上半身を起こした私に寄り添うように、彼はベッドの上へと腰掛けた。
「うん。どうかしたの? 何かあったか、俺に教えてよ。フィオナ」
シリルはこんなに不自然なことをしていた私を見ても、優しく理由を聞くだけで、ここでもし私が「恥ずかしいから、理由は言いたくない」と言ったら、きっとそれ以上なにもいわずに聞いてくれるはずだ。
けど……私、そんなに彼の優しさに甘えて居てて良いの……?
シリルは私が何も言わないことで不安に思うかも知れないのに、私のために彼はそんな自分の気持ちは覆い隠すはず。
ただ、してもらうだけじゃなくて……私だって、彼に優しくしたい。
「シリル……ごめんなさい。私、どうしても、シリルの寝相見たかったの……」
私は恥ずかしそうに切り出すと、シリルは一瞬きょとんとした表情になってから、吹き出して笑い出した。
「はははは! そうなの? 俺の寝相が見たいから、昼から眠って深夜に起きようと? ……フィオナ、ルーンに相談した?」
私の行動の理由を何もかもお見通しな夫に、私はしゅんとして肩を落としつつ頷いた。
「だって! ……シリル、私が早起きしても、どこにも居ないんだもの」
「ああ……ごめん。早起きして素振りをするの、癖になっちゃってて……そっかー。なんで、俺にそれを言わなかったの?」
「もしかしたら、シリルはこれを聞いて、嫌な気持ちになるかもしれないって……思ってっ」
私が言葉を言いきる前に身体の大きな彼に抱きしめられて、全身覆われるような錯覚を受けた。
「はーっ……可愛いなあ……俺の妻が可愛い。おかしいくらいに可愛い。大丈夫? フィオナって存在してる? 俺の妄想が具現化していないよね?」