「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「……あんた。これから、大変だと思うよ。シリルには、他人の気持ちを理解するって、難しいことだから……けど、両者が結婚したいと思っているなら、何の支障もない。俺たちは討伐の報酬で貰った爵位もあるし、フィオナの両親も反対はしないだろう。ヴィオレ伯爵との確執もあるだろうしなー」

 確かに私のお父様と、ヴィオレ伯爵の不仲は有名だ。

 けれど、彼の娘は聖女ベアトリス様だけなので、ヴィオレ家と直接の繋がりのない私には何の関係もないことだった。

「明日、挨拶に行って了承を貰えたら、結婚証明書にサインを貰ったら良いかな? 流石にもう同じ家に住み出した二人に、離婚しろとは命令出来ないだろう」

「……それで、良いの? フィオナ」

 さっき名前を知り合ったばかりで早急過ぎる展開に目眩がしそうだけど、シリルが今ある差し迫った状況を思えば、それも仕方ないことなのかもしれない。

 聖女に脅されている王様が、これ以上とんでもないことを言い出さないとも限らない。

「だっ……大丈夫です……!」


◇◆◇


 そして、約束通りに雨の降る夜道を、酒場近くで待っていた立派な馬車で送って貰った翌日。

< 20 / 192 >

この作品をシェア

pagetop