【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
「さーね……あいつにとっては、見目の良い人形くらいの感じなんじゃない? シリルだって冒険の間は、必要あってあいつのご機嫌取るしか出来なかったし……もう関係ないんだから、はっきり嫌いだから近づくなと言えば良いのに、言わないんだよなあ」

 私もつられて窓を見ていたら、表門から馬車が入って来たのが見えた。シリルが帰って来たんだ。

「シリルは女の子を、傷つけたくないんですかね……?」

「そうかもね。けど、ベアトリスがあそこまで増長したのは、あいつのせいでもあるんだから、はっきり言いたいこと言えば良いとは思うけどね」


◇◆◇


 ルーンさんは彼も言っていた通りに、私の様子が気になっていただけだったらしい。戻ったシリルと何か話すこともなく、すぐに帰って行った。

「フィオナ。君はヴェルデ侯爵の息子を、知っている?」

 堅苦しい服から着替えたシリルに聞かれ、私は唐突な質問に驚いた。

 現ヴェルデ侯爵の息子は一人だけ。だから、それは私が憧れていたエミリオ・ヴェルデだということになる。

「ええ。エミリオ様ですか? ……何度かお話したことがある程度ですが」

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