【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 ……いいえ。彼女だって……気がついていたのかもしれない。言い寄る男性多数の彼女に対して、隣でなんでもない笑顔を浮かべてきた私が抱いていた劣等感を。

「ジャスティナ……私。今は謝られても、許せないと思う」

 私はなるべく、言葉に感情をのせないようにした。

 多分、ジャスティナは私に懺悔したかったんだと思う。何もかも上手くいってエミリオ様と私が結婚すれば、彼女の罪はなかったことになっていたのかもしれない。

 けれど、妻となる人の自尊心を今の私のようにしてしまう人と結婚して、本当に幸せになると思っていた?

「ジャスティナ。私……社交界デビューしてから、ずっとつらかったの。貴女には何人もダンスに誘ってくれる人が居たけど、私には誰も。貴女を褒めてくれる人は居るけど、私を褒めてくれる人は一人も居なかったわ」

「ああ……フィオナ。ごめんなさい。私、貴女がうらやましかったの。エミリオ様は貴女のことを、本当に……」

 ジャスティナが、私を羨ましかった? ただ一人でダンスを踊るカップルを見ているだけの、壁の花だった私が?

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