【書籍化】「急募:俺と結婚してください」の手持ち看板を掲げ困っていた勇者様と結婚することになったら、誰よりも溺愛されることになりました。
 私の話を聞いて、シリルはよくわからないと言わんばかりだった。

「え……確か、俺は式の話をした時に言ったけど……結婚式に着るドレスのことがあるから、子どもを作るのは結婚式の後にしようって。フィオナもわかりましたって言ってたよ? 俺のせいで慌てて結婚証明書は提出したけど、結婚式のドレスは着てみたいと思っていたのがあるだろうと思って、俺なりに気を利かせたつもりだったんだけど」

「え……?」

 私はぽかんとした表情になっていたと思う。だって、そんな……それなら。私が悩んでいたことは、全部誤解だったってこと?

「ああ。ごめん。俺もこれを言うのに恥ずかしかったから小声になって、聞き返されるかなってその時に思ったけど……フィオナはわかりましたって答えたから、何度も聞くことでもないしなって」

 恥ずかしそうに謝ってくれたシリルに、悪いことをしたと思った。

 だって、私はその時自分のことで精一杯になって、シリルのことを考えられていたかというと違うもの。

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