今は魔王の手も借りたい。~転生幼女のほのぼのチートスローライフ~
 もう一度言ったエステルを、ゴダンが期待と感謝の眼差しで見つめる。

(この世界には国を滅ぼしたり、人間を虐殺したり、同じ仲間でさえ簡単に殺してしまうゼファーがまだ存在してない)

 様子を見ていたレスターは抜き身の剣を鞘に納め、妹の判断にゆだねた。

(私はゼファーに、魔王になってほしくない)

 なぜか泣きそうになり、エステルは自分の唇を噛んだ。

「もう帰りたいよ……」

 震えるひと言にはエステルのいろいろな思いが込められていた。

 それをどう受け取ったのか、長い沈黙のあとでゼファーが息を吐く。

「甘い」

「わかってる」

「殺しておけば、二度とお前を傷つけられない」

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