冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「でしょ? それでどうか一つ、秘密にしていて下さいね。お仕事頑張って下さい」

 人差し指を口に当てたキースは、肩をそっと撫でそのまま去ってゆく。鼻をくすぐる落ち着いたオードトワレの香りに力が抜け、セシリーはへにゃりと壁にもたれた。

(たらしよねぇ……)

 口をもごもごさせつつ、世の中容姿がよければ大抵のことは許せるのだと再認識してしばらくの間ぽ~っとしてしまうセシリーだったが、今は仕事の最中だ。慌ててバケツに水を汲み、床の汚れと向き合うべく急いで台所を出るのだった。
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