冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 大体の騎士たちの居室の清掃が終わり、ロージーとセシリーは職員控え室で休憩を取りつつ、騎士たちの制服をつくろっていた。訓練や戦闘で衣服の消耗は必然的に激しくなるが、その都度毎回買い替えるわけにもいかない。予備を渡して、小さなかぎ裂きくらいはその日の内に処理してしまう。

「まったく、セシリーが来てくれてなかったらと思うと、ぞっとするよ」
「これからはちょっとでも楽して下さいね、ロージーさん」

 まだ二十代だというのにどこか苦労の影がある彼女の隣でセシリーも針を動かすが、慣れと経験がものを言うのかあまりうまくはいかない。その間にもロージーは見惚れるような針裁きで何か所もの補修を仕上げてゆく。物語の中にいる、お城勤めのお針子さんみたいだった。

「無理しなくていいよ、それぞれ得意不得意あるし、あたしは慣れてるから。それよりお昼ご飯のことでも考えてあげててよ」
「う~、わかりました」
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