冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 あのキースであれば、在学中に目ぼしい人材を見つけておいて引っ張るくらいのことはやりそうだ。しかし彼女も若い女性で、見合い話などがある度に心が揺れただろう……それを指摘すると、彼女は気恥ずかしそうに告げた。

「そりゃね、結婚して辞めようかなんて思ったこともあるけどさぁ。貴族様のお家みたいに跡継ぎ跡継ぎってうるさくは言われなかったし、国が後ろに付いてるからお給金も悪くはなかったし。なにより、なんかやってる内に楽しくなってきちゃったんだよね。あいつら見てると弟がいるみたいで面白いし、なんせやることだけは山のようにあるから退屈しないで済んだし。ちょっと大家族の世話をしてるみたいな感じよね」
「それはわかります……! 皆気さくですし」

 自分らしく働けるこの仕事が彼女には合っていたのだと、ロージーは楽しそうに笑う。大変だけれど、多くの人と言葉を交わせて喜ぶ姿が直接見られる仕事だから、やりがいを感じていられるのだろう。そこにはセシリーも素直に共感できた。

 話は盛り上がり、そうなるとやはり気になってくるのは、彼女がキースやリュアンと知り合ったという学生時代のことだ。
< 108 / 799 >

この作品をシェア

pagetop