冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 俺は窓の外に視線を逃がし、目を細める。
 あまり昔のことは思い返したくもないから舌打ちして首を振ると……これ以上踏み込まれないために話題を切り変えるべく、机の引き出しから箱を取り出した。

「商家の娘なんだろう? お前の目から見てどうだ、これは売り物になると思うか?」

 丁寧に磨かれたいくつかの装飾品を中から取り出し、セシリーの目の前に並べてやる。俺としては軽い気持ちで聞いたのだが、彼女は予想以上に真剣に思案し始めた。

「ルーペ、お借り出来ますか?」

 俺は黙って、セシリーの手のひらに愛用の銀で縁取ったコイン型ルーペを乗せた。するとなるほど、ハンカチを手袋がわりに作品を子細に眺める彼女は、ちょっとした仕事人の趣がある。

 ……やがてルーペが置かれ、俺に掛けられたのはまっすぐで厳しい言葉だった。
< 119 / 799 >

この作品をシェア

pagetop