冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「それは少し、うまくいかなくてな。……でもまあ、はっきり言ってくれたのは助かった。さあ、何をしてたかはもう分かったろ。仕事の途中なら、そろそろ行ってくれ」
「え~っ? 作業風景とか見せてくれないんですか?」
「誰が見せるか……! もう来るなよ、じゃあな。あと、どうもありがとう」
これ以上こいつの相手をして変に懐かれても困るので、俺は渋るセシリーの背中を押して外に追いやり、形だけの礼を最後に扉をバタンと閉めた。去っていく足音に胸を撫でおろしたところで俺は、少しばかり動揺していた自分に気づく。彼女の違った一面にも驚いたが、それが理由ではない。
いくつかの作品から彼女が好きだと言って選んだもの――あのブローチは俺がかつてある人に渡すために、一番心を込めて作っていたものだったから。
「……そういうこともあるだろ」
たまたま好みが一致しただけだ……忘れようと、俺は机の前に座って作業を再開する。しかし、セシリーの笑顔がちらつく度、どうも昔のことが思い出されて手が進まない。観念した俺は背もたれに体を深く落とし込むと、しばらく目を閉じた。
「え~っ? 作業風景とか見せてくれないんですか?」
「誰が見せるか……! もう来るなよ、じゃあな。あと、どうもありがとう」
これ以上こいつの相手をして変に懐かれても困るので、俺は渋るセシリーの背中を押して外に追いやり、形だけの礼を最後に扉をバタンと閉めた。去っていく足音に胸を撫でおろしたところで俺は、少しばかり動揺していた自分に気づく。彼女の違った一面にも驚いたが、それが理由ではない。
いくつかの作品から彼女が好きだと言って選んだもの――あのブローチは俺がかつてある人に渡すために、一番心を込めて作っていたものだったから。
「……そういうこともあるだろ」
たまたま好みが一致しただけだ……忘れようと、俺は机の前に座って作業を再開する。しかし、セシリーの笑顔がちらつく度、どうも昔のことが思い出されて手が進まない。観念した俺は背もたれに体を深く落とし込むと、しばらく目を閉じた。