冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 小さい頃から天才肌で、魔道具のことしか気にせず友人もいなかった孫娘を気にしたルバートの紹介で、セシリーとは数年前に出会った。難解な彼女の話になんとか着いていけたのは、クライスベル家の娘として父から様々な魔道具の知識を伝えられていたおかげだろう。以来妙に懐いてくれて、今では姉妹のように接する仲だ。

「お爺ちゃん! セシリーが来るんだったら絶対伝えてよって言ったのに!」

 祖父を強く睨むティシエルに、セシリーは慌てて訂正する。

「違うのよティチ、私の方が急ぎの用で勝手に訪ねてきたの」
「すまんすまん。ああ、リュアン殿、こちらは私の孫娘でティシエルと申します。こんな形をしておりますが、一応この商会に雇用して頂いている魔道具作成師のひとりでして」
「へえ、お若いのに立派ですね……」
「どうも……」

 両方とも人見知り気質なせいか、リュアンとティシエルは気まずそうにお互いを一瞥し、頭を下げ合う。そこでルバートが時計に目をやったので、セシリーは気を遣って彼との話に区切りを付けた。
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