冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「ぐ、ま……魔法騎士団だか何だかしらないが、所詮国の飼い犬だろう! 僕の父上はなあ、この国の宰相様とも知り合いなんだ! 一言口利きしてもらえれば、お前など!」
親の権力を笠に着た情けない台詞を、リュアンは鼻でせせら笑う。
「やってみろ。その程度で罷免されるなら、俺も魔法騎士団もこの国を護るに値しないという、それだけの事だ。あんた、公爵家の息子だとか言ったが、貴族という地位がなぜ敬われるべきか、ちゃんと理解しているか?」
リュアンの背中が怒気を振り撒き、その迫力に庇われているセシリーまでもが息を詰めた。
「この国と民を守護し、安定した生活を保障する責任を負うからこそ、人々の上に立つ権利が生じる。それを忘れ、立場の弱いものにいうことを聞かせようというだけの脳無しが居座っていられるほど公爵という地位は甘くはないぞ。家を継ぐつもりがあるなら、周りの者の顔を見てよく考えろ」