冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 最低でも魔法騎士団に選ばれる条件としては、戦闘に使用できる魔法と、高い運動能力の両立が必須で、望まなければ辞退も可能。なればつまり、ここに配属された人たちはあえて魔物と戦うことを選んだ者たち、ということになる。

 生徒会長を務め、家柄も高貴なキースほどの人材ならば、正騎士団の方からも大きく声がかかっただろう。戦闘で危険を冒さねばならない魔法騎士団より、安全で順当なそちらを選び、出世を望むのが普通の考えではないのだろうか?

 そんなことを不思議に思ったセシリーに、キースは思いもよらぬ言葉を返した。

「もし、団長との出会いがなければ、そうしていたかも知れませんね。自分の偏見を正そうともせず、生まれに縛られ、内心を押し込めて……おっと」
「わわっ」

 リュアンと何があったのか……話に夢中で平日の街の人混みに押されてよろけたセシリーをキースはすっと引き寄せ、その手を自分の腕に添えさせた。
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