冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
その強い火の魔力は魔物の体を消し炭に変えただけでは収まらず、同時に周囲の木々までその手を拡げてしまった。すぐに業火が周りを取り囲み、逃げ場のない火勢に追い詰められる。
(……死ぬのかな、僕は)
移動しようとしたものの、煙で頭が朦朧とし、地面に倒れ込むラケル。彼は仰向けになると、青い空へ火の粉が立ち昇っていく様を見上げた。
(綺麗だな……)
死の間際なのに、不思議と穏やかな気持ちで、彼はぐっと上へと手を伸ばす。
(これが、魔法の力なんだ。こんなのが自分にあるってわかってたら、もっと色んなこと、できたはずなのに。悔しいな……今から死んでしまうのに、こんなにわくわくしてる)
目の前の恐怖から気を紛らわせるため、ある種の逃避的思考。徐々に視界が狭まってゆくのを感じていた彼の耳に届いたのは、ひとつの遠吠えだった。
(……死ぬのかな、僕は)
移動しようとしたものの、煙で頭が朦朧とし、地面に倒れ込むラケル。彼は仰向けになると、青い空へ火の粉が立ち昇っていく様を見上げた。
(綺麗だな……)
死の間際なのに、不思議と穏やかな気持ちで、彼はぐっと上へと手を伸ばす。
(これが、魔法の力なんだ。こんなのが自分にあるってわかってたら、もっと色んなこと、できたはずなのに。悔しいな……今から死んでしまうのに、こんなにわくわくしてる)
目の前の恐怖から気を紛らわせるため、ある種の逃避的思考。徐々に視界が狭まってゆくのを感じていた彼の耳に届いたのは、ひとつの遠吠えだった。