冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
ラケルが住んでいた農村部ではこんなものはほとんど見なかったので、もし魔物に襲われることが無ければ、ああいった物がとても高い値段で取引されていることなど知る由もなかっただろう。彼が今運んでいる魔法の薬も、一瓶が金貨十枚もする、売るだけでひとりなら一月も暮らしてゆけそうなくらいお高い物なのだ。
(僕も将来こういうのを作って、お金持ちになって暮らすんだろうか)
木箱を開けて一瓶薬を摘まみ上げてみたが、どうもしっくりこない。お金の大切さは知ってはいるけれど……やはり魔法が使えるとわかった時のように、期待感のようなものが湧いてこなかった。つまらなそうにそれを木箱に戻し、さっさと残りの配達を終えてしまおうとしたラケル。
「――誰か、そいつを捕まえとくれ!」
その目が……視界の端っこに映った人物に急速に引き寄せられる。
通りの奥で倒れた老婆が叫び、鞄を奪った男を指差したのだ。
(僕も将来こういうのを作って、お金持ちになって暮らすんだろうか)
木箱を開けて一瓶薬を摘まみ上げてみたが、どうもしっくりこない。お金の大切さは知ってはいるけれど……やはり魔法が使えるとわかった時のように、期待感のようなものが湧いてこなかった。つまらなそうにそれを木箱に戻し、さっさと残りの配達を終えてしまおうとしたラケル。
「――誰か、そいつを捕まえとくれ!」
その目が……視界の端っこに映った人物に急速に引き寄せられる。
通りの奥で倒れた老婆が叫び、鞄を奪った男を指差したのだ。