冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 対応しようとした村民たちを非難させ、大半は焼き払って駆除したものの、胞子は風に乗って村中に飛散していた。近辺の空気の浄化や毒で苦しむ彼らの治療も必要となり、連日大量の魔力を消費したことで、俺の体と精神はもうくたくただった……。

 強い疲労を抱えた体は今すぐ休みたいと訴えるが、同じように奮闘してくれた仲間たちとの食事会がこの後予定されている。団長として彼らを労ってやらないわけにはいかない。

(腕輪が無ければ、危うかったかもしれんな)

 俺は左腕の魔法の腕輪に目をやると、短く息を吐く。
 中央に小粒のアメジストが輝くそれは、今も大気に満ちた魔力を体の中に集めてくれている。

 先日セシリーから貰ったこの腕輪が無ければ、魔法を限界まで使用しても苦しんでいた村人すべてを救うことはできなかったはずだ。日々魔法に携わるものとして、こうした魔道具の情報は欠かさず頭に入れるようにはしていたのだが、まさか彼女が魔道具作成師とまで懇意で、市場にも流通していないような品を贈ってくれるとは思いもよらなかった。悔しいが、これはセシリーのお手柄だと認めざるを得ない。
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