冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
彼女には夢があった。あんなことが無ければ、今もきっと多くの人を、苦しみから救うことができていたはずだったのに……。
肩がどっと壁にぶつかり、そのまま背中を預け、通路にずるずると座り込む。
その内にも記憶は眩しいほど鮮やかに彼女の様々な表情を照らしていく。
『レイ、私……聖女候補として離宮に入ることが決まったの。大変な栄誉なんだ。喜んで、くれる?』
(止まれ……ううっ、止まってくれ! ……その先は、見たくないんだ!)
俺は激しく息を荒げながら喘ぎ、恐怖した。
先に何があるのは分かり切っている。追憶から逃がれようと一心に頭を振るが、そんなことで一度引きずり出された記憶の流れを堰き止めることはできない。
時を重ねるごとに次第に近づく彼女との距離が、より一層苦しみを募らせる。早鐘のように鼓膜に響く心音は徐々に間隔を狭め、定められた終わりが近づいてくる。
肩がどっと壁にぶつかり、そのまま背中を預け、通路にずるずると座り込む。
その内にも記憶は眩しいほど鮮やかに彼女の様々な表情を照らしていく。
『レイ、私……聖女候補として離宮に入ることが決まったの。大変な栄誉なんだ。喜んで、くれる?』
(止まれ……ううっ、止まってくれ! ……その先は、見たくないんだ!)
俺は激しく息を荒げながら喘ぎ、恐怖した。
先に何があるのは分かり切っている。追憶から逃がれようと一心に頭を振るが、そんなことで一度引きずり出された記憶の流れを堰き止めることはできない。
時を重ねるごとに次第に近づく彼女との距離が、より一層苦しみを募らせる。早鐘のように鼓膜に響く心音は徐々に間隔を狭め、定められた終わりが近づいてくる。