冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「部屋まで送ります」

 俺は壁に手を付くとよろめきながら立ち上がる。ラケルは肩を貸し、セシリーも反対側から体を支えてくれた。ゆっくりと自室へと送られるうちに少しだけ気分は回復し、ふたりに礼を言うと俺はベッドに横たわる。

「もう大丈夫だ。情けない姿を見せたな……。俺のことはもういいから、ラケル、セシリーを送って行ってやれ。もう暗くなるだろう」
「ですけど……」
「しばらく、ひとりにして欲しい。行ってくれ」

 なおも心配そうにするふたりにきっぱりと告げると、俺は追い払うように手を振り、背を向けた。

「わかりました。……セシリー、行こう」
「うん……ちょっと待ってて」
< 217 / 799 >

この作品をシェア

pagetop