冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
あの出来事以来、今まで俺は――今は亡き人の途絶えた意思を継ぎ、想いを遂げる――そんな決意を拠りどころに必死に苦しい日々を乗り越えてきた。キースはそれを強い心の成せる業だと認め、多くの仲間と共に行く道を支えてくれた。そして今、この騎士団の長として曲がりなりにも人々を苦しみから救う力を手にし……弱かった自分も辛い過去も、全てを克服できた。
――そう、思い込みたかっただけだった。
「何も変われていないじゃないか……」
額にかざした手の下、瞼の裏を熱いものが零れていく。失ったものが帰らぬように、心に刻まれた傷は、いくら時間が経とうとも癒えてはくれないのかもしれない。
(……ならば俺は、もうこれ以上強くは……)
それを胸の痛みとして感じながら、俺はベッドの中で蹲る。
――そう、思い込みたかっただけだった。
「何も変われていないじゃないか……」
額にかざした手の下、瞼の裏を熱いものが零れていく。失ったものが帰らぬように、心に刻まれた傷は、いくら時間が経とうとも癒えてはくれないのかもしれない。
(……ならば俺は、もうこれ以上強くは……)
それを胸の痛みとして感じながら、俺はベッドの中で蹲る。