冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「そう……ですわね。御嬢様がお望みなら、エイラとしてはお止めするつもりもございませんが、重々お体にはお気を付けくださいませ」
「うん。それじゃ、行ってくるね!」

 準備が済むと、エイラに見送られセシリーはクライスベル邸を出てゆく。
 そして、左右を見回すと少し離れたところに立っていた男の子が軽く笑って手を振ってくれた。

「こんにちは、セシリー!」
「ラケル、今日はよろしくね!」

 今日は非番のラケルが、彼のお師匠様であるジョン・オーランドという魔法使いに合わせてくれる予定なのだ。ジョンは薬の工房を営んでいて、本日はそちらにいるはずだという。実はラケルもリュアンのことを気にしていて、彼の調子が戻るよう疲労に効く薬を譲ってもらうついでだということだった。

「じゃあ行こうか。その前に、これ……荷物になるかと思ったんだけど、この前のお礼と思って」
「いいの!? ありがとう、すごく綺麗……!」
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