冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「ああもうさっきから、お師匠様まで勘違いしないで下さい! こ、この人は僕の同僚で大事な友達なんですよ! 貴族の娘さんなんだから、滅多なこと言わないで下さい!」
「しかし、あの花あげたんだろ?」
「あげましたけど、それはそれです!」

 ラケルの剣幕にようやく男性は引き下がると、セシリーの方を向いて挨拶してくれた。

「そうか、それは残念だ……。こほん、失礼した。私はジョン・オーランド、そこのラケルの元師匠です。お嬢さん、お名前を伺ってもよいかな?」
「セシリー、クライスベルと申します。魔法騎士団で雑用係として働いていて、ラケルとはその縁で友達になりました。今後ともよろしくお願いいたします」

 セシリーがちょんとスカートを摘まんでお辞儀して返すと、ジョンは怪訝そうな顔をしてラケルに確認する。

「ちょっと待て。クライスベルとは……王都に最近できたあの大きな商会の御令嬢ではないのか? それが、雑用?」
「まあ、ちょっと色々事情があるみたいで。お師匠様、それより不眠と、滋養効果のある薬ってありますか?」
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