冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 不安は残るが見守るしかないと、ジョンから黄色い錠剤の瓶を受け取ったラケルとセシリーは頷き合った。

「ありがとうございます、お師匠様。それと、こちらを」
「そうであったな。受け取ろう」

 ラケルが渡す小さな袋からはお金の音がしたので、おそらくは彼がジョンに借りる形になっていた騎士学校の授業料だろう。ジョンはそれを中身も見ず懐に仕舞い込むとラケルを激励しつつ、人の悪い笑みを浮かべる。

「頑張っているようだな、魔法騎士団の勇名は私の耳にも届いておる。よし、どれだけ腕を上げたのか見てやるか。魔法陣を見せてみよ」
「ええ!? 僕がそっちは苦手だって知ってるくせに……」

 弱った様子で口ごもるラケルを余所に、せっかくの機会なのでセシリーはとても基本的な質問をジョンにぶつけた。

「あの、私魔法のことよく知らないんですが……詠唱と魔法陣って、どうしてふたつに別れてるんですか?」
「うむ、それはな……」

 するとジョンは簡潔に説明してくれた。
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