冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「あの……。ラケルから貰ったお薬、ちゃんと飲んでます?」
「ああ、元々調子は悪くないんだ。心配かけたな……」

 帰った早々キースから呼びつけられたのに文句のひとつも出てこないし、セシリーの質問にも、前みたいに無視するようなことはない。落ち着いていると言えば聞こえはいいが、どうも元気がないように感じる。やむなくセシリーは自分から話を切り出した。

「団長……私あなたに何かしませんでした? ご飯に変な物入ってたとか、大事なものを壊したとか」
「うん? いいや……セシリーはよくやってくれているよ」
「そ、そうですか……」

 この反応は絶対におかしい……そう思うのに、何から聞き出せばいいのかもわからない。これならば、以前のように喧嘩腰で来られた方がまだましかもと、心配で胸がちくちく痛む中、セシリーは訓練室の分厚い両開きの扉を潜る。

「お待ちしていましたよ、ふたりとも」
「団長もセシリーもお疲れ様です!」
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